私が15年前に新潟に来たときは、佐渡の入り込み人数が100万人を越えました。盛大な祝賀会が開かれ、私も招待されました。島をあげてお祝いしたことを覚えています。
それから15年、現在のような結果になっていますが、今から申し上げることが、その現象をとどめることが出来るカンフル剤になるか。そうなる自信ははありません。が、しかし、この15年間、外から見てきた佐渡と、今年4月から新潟県にお世話になって、いろんな方に話を聞いたり、過去の資料を見たりしてきた中で、気が付いたことなどを話します。
1.最近出合ったちょっといい話
最近感激した出来事がありました。7月7日に旅行業協会が、佐渡観光を何とかしたいと研修に訪れ私も同行しました。総勢13〜14名で、相川をふれあいガイドに話を聞きながら見学する事になりました。81歳の井上さんという、一番人気のある方が来てくれました。歳の事を言うのは失礼ですが、無宿人の墓まで上りきったら息が切れて説明が出来ない様子でした。「ここは京町だ。」「ここは大工町だ。」と説明してくれたんですが、「でえくまち」というんですね。そんな井上さんの話を聴いているうちに、相川の町がなにか違って見えてきました。81歳の方ですから、若い頃はまだ金山が栄えていて、子どもの頃の話をしてくれます。昨日の事のように、ここには何があったと話してくれる。「ここに、元締めの人が住んでいて、そのお嬢さんがいつも綺麗な服を着ていて、私達を相手にしてくれなかった。」同時代の話をしてくれるんです。本当は1時間で予定していたものを、2時間もかけて説明してくれました。相川の町が何の変哲も無い、ただ古い木造の家が並んでいるだけの町が、違って見えてくるんです。光り輝いて見えました。本当にびっくりしました。
私は、その前にもトレッキングガイドの方に、青ネバ峠でお話を伺ったことがあります。その方もとても情熱的で、「来たお客さんは絶対にまた来てもらうように話をします。リピーターになってもらえるように話をします。」と熱を持って話していました。びっくりしましたし、涙が出る思いでした。
聴いた話では、先日えっさほいさ会議というのが開かれ、4つほど観光コース設定され、そこに県の職員も参加させてもらいました。1つが 10〜15人ほどのグループだったそうですが、能舞台を歩いて見に行ったそうです。そこで、村の人に能を教えてもらうという仕掛けだったそうですが、その舞台には東北大学の研究グループが能舞台で練習をしていたんです。しまったと引率者も思ったようですが、そこには、教えてくれるはずだった農家の方々が待ってたそうなんですが、学生の練習を見ているうちに、「そこは違う。こうだよ。」と教え始めたんだそうです。来ていたメンバーは、島外の方ばかりだったので、その様子にびっくりしたそうです。このような言い方は怒られるかもしれませんが、そこら辺にいる農家のおじさん、おばさんたちが、能を教えるんですよ。それも、手取り足取り。こんなことが、この島以外にあるでしょうか。他にはありません。ここにいらっしゃる皆さんが、学生に能を教えるんですね。そんな土地は、この島をおいて、日本中どこにもありません。そりゃ、能の役者がいて、それを商売にしていたら教えてくれるかもしれません。それが、その能舞台だけじゃなくて、島中がそうなんです。こんな土地はありません。この島って言うのは、すごい島だと、その話を聞いて思いました。そういう素晴らしい、どこにもない島なんです。佐渡以外は。
2.佐渡人の謎
みなさんは、それだけの素晴らしい伝統と歴史と文化を身につけておられます。
しかし、観はというと、佐渡の皆さんは観光が嫌いなのではないかと疑っています。その理由を、例をあげてお話します。
知人が、佐渡が一番混んでいる8月に佐渡に来て、食事しようと、両津のある食堂に入ったそうです。その食堂には、おばあさんが一人いて「あれ?今日は休みですか?」と聞くと、「いえ、やってます。従業員は夏休みだから帰しました。」と答えたそうです。
なにが言いたいかというと、一番お客さんが多くて、普通ならば一番稼げる時に、佐渡の人は、みんなを休ませてしまうんです。「どうしてかな?」と帰ってきた人が不思議そうに話していました。「佐渡の人は儲ける気が無いんじゃないか?観光は関係ないんじゃないですか?」というんです。
このような例は、他にもあります。
私は8月にアースセレブレーションに行きました。
私の前の日に見に行った人の話なんですが、もう興奮して、その余韻を味わいつつ小木の町で一杯やろうかと町に出たそうです。その高揚した気持ちを皆で分かち合いたいと思っていたそうですが、町はどこも真っ暗で食堂はやっていない。しかたなく宿舎に帰ったようです。「どうして開いてないんだ?」と言っていました。
アースセレブレーションで私が見たのは、海岸の芝生の所でフリーマーケットが開かれていました。来ている人たちが、店を開いているんですね。自分達が売るものを持ってきて旅費稼いで帰るそうです。独特な雰囲気でした。外国人達が多くいるわけですから、それなりに雰囲気はありました。その中で、小木の人は店を開いていないんですね。さざえひとつ売っていませんでした。その雰囲気が好きな人にはいいですが、私は、なんで佐渡のものをもっと売らないんだろうと思いました。佐渡の方は、観光と言うと旅館ばかりが儲かって、俺たちには関係ないと思っているんでしょうか。
先程理事長もお話されましたが、観光が一番の産業だと、島の外の人も思っていて、島の人も思っているかもしれません。しかし、私から見ると、佐渡の人は観光が嫌いなんじゃないかとさえ思えないことはない状況が見られます。皆さんいかがでしょうか。
今日ここにいらっしゃる方々は、こういう場ですから、観光について興味と言うか、心配に思っている方々ばかりだとは思います。しかし7万人弱の島の大半の人たちは、観光客なんか来なくていいと、思っているのではないでしょうか?と、言わざるを得ないような、光景や話を聞くことが多いんです。佐渡の方は、私は新潟市内の出身ですが、大学の進学率も高いし、この前、芸大の学長も出ましたけど、歴史的に見ても素晴らしい方が多い所です。国宝級の方も随分いらっしゃいますね。さっきの能の話じゃないですが、佐渡の方の知識レベルというかプライドというのは、この国で一番高いのじゃないか?新潟市の人間になんておよびもつかないような、力と能力を内に秘めてるとおもうんです。だから、観光というのが下世話な話だと思っていらっしゃるんじゃないかと思えてならないんです。
経営者の方は別ですが、旅館の従業員の方々に個々に「大変ですね。」と尋ねてみました。「潰れないようにしないとね。」と。すると、「潰れたら、家に帰って農家をやります。」と答えられました。大変失礼な言い方をしているかもしれませんが、お許し下さい。ほとんど危機感が無いように感じました。
個人的な話をすると怒られてしまうかもしれませんが、私の親しいある方(観光関係者)と、一昨日飲んでいて初めて知ったんですが、田んぼを一町歩、さらに山も持っているそうです。いやぁ。驚きました。「あなたは、こんな事(観光の仕事)をしていなくても食っていけるじゃないか。」怒られましたが、佐渡の人は豊かです。旅行業が無くても食っていけると思っているし、実際に食っていけるんです。私のように、ネコの額のような狭い所に生まれた者にしたら、、言ってみたい言葉です。「土地が一町歩もある」と。
観光企画監の、このクビを取るのは簡単です。佐渡の観光が現在66万人ですが、それが60万人に落ちたら私はクビです。そうなったら、私に働き場所はありません。耕す田んぼもありません。だから必死でしゃべっているという訳ではありませんが、佐渡は豊かなんじゃないか、豊か過ぎるんじゃないかと感じるんです。そういうと、また怒られるかもしれませんが、そういう印象をもちました。
大学進学率も県内で一番です。やっぱり、皆さん方の持って生まれたここ(佐渡)でのDNAというのは、私共がおよびもつかないものです。その方々がこういう場、公の場になると、観光について「私は関係ない。」とおっしゃるんです。それを私は、不思議に謎に思っているんですが、信じている事があります。それは一人一人になると、島外の旅行客気持ちよく受け入れてくれるという事です。どうも皆さんが一緒になると、それが、プライドが許さないのでしょうか?。それをすると、人から、「何だお前は。」と言われるのではないか?そういうことを心配して表現されないのでしょうか。しかし、一人一人はものすごく温かい気持ちを持って受け入れてくれるんです。そういう人達だろうと、実は信じて疑いません。ですから、本当にこれは謎で、相反する面があるということなんでしょう。とても不思議な事です。
3.佐渡観光の呪縛
佐渡観光の呪縛という事でお話します。
この前4月12日だったでしょうか、旅行業の関東と中部圏のえらい方が佐渡へお越しになり私も同席しました。風評被害で佐渡も大変だったろうからと、本当は愛知でやる予定だった会議を佐渡でやってくれたんです。大変有難い話ですね。会議が終わって、懇親会になり、「それでは忌憚の無いお話を。」となったら、そこからが大変でした。
静岡の支部長さん。この方は旅行業一筋30〜40年という年配の方でしたけれども、手を上げて、「佐渡来たら家庭料理より不味いものを食わされる。どうして、それで佐渡へ行きますか?」と話されました。皆さん、怒らないでくださいね。「私だって立場(旅行エージェント)として苦しいんです。」そうおっしゃいました。ところが、今日私が宿泊する宿なんですが、実はすでに、食事をしてきました。美味しかった。その宿は、山のように食事が出てくるんです。皆さんも噂はご存知だと思いますが、実は今お腹が一杯でしゃべるのさえ大変な程です。満足しました。
佐渡へのリピーター率は、いろんな調査で違いはありますが、20%を切っている調査と、一番高いものでも30%です。では、北海道や沖縄はどうかというと、沖縄は60%越えています。北海道は50%も越えています。佐渡と全然違うんです。佐渡に来た人の5分の4は、もう来ないんです。今日泊まる宿に聞いたところ、そこは40%だって言っていました。
佐渡に来るお客さんは、やはり島ですから美味しい魚を期待してくるんですね。でも、来て見ると、本土から取り寄せた魚が並ぶんです。団体の場合は粒を揃える必要があります。お客さんが、隣の人と違うと怒るので、エージェントも困りますから、同じものを出すようにしてもらいますし、宿もそうします。50人もの団体に、同じサイズ、同じ種類の魚を出そうとすると、佐渡ではなかなか調達できないのが現状です。そこで本土から買うことになってしまうんんですね。さらに悪いことに、一番お客さんの多い夏の時期には魚が取れません。イカだけです。一方、一番お客さんの少ない冬の時期に魚が取れるんです。寒ぶりも、カニもです。佐渡が120万人来ていた時はどうしていたのかと思う位に、悪条件が重なっているんですね。
佐渡はもう一つ、数を言われます。数=入込み客数です。
これは、岩室や月岡では言われません。湯沢でもそうですが、何人来たとはいわれません。それは、数えられないからです。佐渡は船や飛行機などの利用状況で、数が出てしまうんです。これが数の呪縛です。
みんな、「数が落ちた落ちた」と言います。だから、やっぱり増やさなければいけない。市長も、県知事も、私も、数が落ちると「どうなってるんだ!」といわれます。だから、数を増やそうとします。そうすると、旅館の皆さんは、JRや旅行エージェントに行って、「数を送ってくれ。」と言います。すると向こうは、「高いと売れないから安くしろ!」と言うわけです。この間、ある高級旅館の専務と話していたら、時として「5,000円でやって欲しい。」と言われるそうです。高級旅館で5,000円ですよ。他の旅館やホテルはおして知るべしです。しかし、数が欲しいんですね。数を取らないと言われますから。ホテルや旅館だけでなく、市長や県知事も言われます。
でも考えてみて下さい。100万人が一泊したら100万人泊ですが、50万人しか来なくても二泊したら100万人泊です。同じなんです。数の呪縛に陥っていて、数ばかりで評価されてしまう、中身じゃないんですね。数で評価されるんです。
今までは団体旅行が多かったんですが、これからの私達の年代から後は、団体旅行は無くなります。個人旅行ですよ、これからは。でも、やっぱり数を追ってしまうんです。問題は、二泊だったのか一泊だったのかデータが取れない事です。これは佐渡に限りません。日本全国どこも取れません。これはデータを取る仕組みが必要なんですが、これは話が別なのでまたの機会にお話します。
要するに、これから中身で勝負していかなければならないんですが問題があります。それは、100万人が50万人になったら佐渡汽船が持たないんです。だから、あーやっても、こーやっても、どーやっても、佐渡はアリ地獄なんです。それに加えて、島民の皆さんが表向きは観光に冷たいんです。「俺たちの知った事か。」と。でも、本当は関係あるんです。でも、表向きは関係ないような顔をしておられる、アリ地獄ですね佐渡は。「もう、抜け道がない。」そういってしまうと、私の話がなんの意味もないということになりかねません。しかし、やっぱり実態をわかってもらいたいんです。
何回も繰り返すようですが、佐渡は皆さんの「力」「伝統」「歴史」「皆さんの人柄」です。これは、どこの出しても人後に落ちない、負けないものを持っておられます。しかし、素直に発揮する事は嫌いだと思わざるを得ないんだなと感じています。観光とは、大なり小なり、そういう傾向にあります。観光で儲けている人を見ると悪だと思う人がいるんです。これは佐渡だけではないんです。ですから、そういう意味では、佐渡が特別に特徴があるという訳ではありません。しかし、佐渡のポテンシャリティー、すなわち持っておられる潜在力からすれば、私にとっては謎であって、不思議だと言わざるを得ません。
これまで、佐渡に関する調査は随分なされました。大体2年ぐらい経つと前の調査を忘れて、「佐渡の観光はなぜ悪いのか?」と誰かが調査をしています。あるいは頼むんですね。これまで昭和60年から、2年おき位に何十冊と調査が出来ています。この間も、日本政策投資銀行の方が来られて、「佐渡の研究をしたいと。」話されました。「佐渡はマーケティングが下手なのではないか。と言うんです。うん、確かにそうだなと思いました。しかし、「これまで何冊も調査書があるからまず読んでみて、それから調査書を書いたら?」と話しました。タダでやってくれると言うんだから、やってもらうに越した事は無いんですが、どこでもそうでそうが、皆さんはこの調査書を読んでも、そのとおりにやるということはまず無いでしょう。
例えば、近藤元次先生が立派な調査書を作ってくれています。聞いたんですが、あの通り(調査書とおり)にやっていたら、佐渡はものすごかったというんです。しかし、先日佐渡の方に聞きました。「あんなものは到底出来ません。」と。
もう一つ特徴的なことを申し上げると、皆さんが観光に対して難しいポジションにおられるので、どうしても「旅館」や「交通業者」「旅行エージェント」ばかりが頑張るんですね。県が3年間で1億円の予算を出して「佐渡アクションプラン・佐渡百選」というのを行いました。そして、具体的なアクションプログラムを作りました。そこにやるべきことは山のように書いてあるんです。何10項目と。それをやる人は誰かというと、それも書いてあるんです。やるのは全て旅館の皆さん、交通業者、そして旧市町村の観光課長。そこにJCも出てこなければ、島民の皆さんも出て来ません。
ちょっと外れるかも知れませんが、観光地でうまくやろうとして、観光業者だけでやっている所は絶対にうまく行きません。やっぱり、町づくりと連携しなければうまくいかないんです。さっき、えっさほいさ会議で能を見に行ったとお話しましたが、町づくりの人がやっているんです。聞いて見ました。「そこに、旅館の人は来ましたか?」と。来てないんです、お互い様なんですね。そこに落差があるんです。
さっき副理事長とお話したんですが、どこかの町では、電柱を埋めて景観に配慮するとかいろんなことをやってます。標識も立ててます。町づくりと連携しているのを見てきましたと話していました。
この佐渡は、皆さん方が観光に対して遠慮があるので、観光に頑張るのは旅館業ばかりになってしまっています。この辺の連携の無さが佐渡の特徴です。それが、呪縛をもっと落ち込ませているんです。どんどんアリ地獄にはまっているんです。今、佐渡の観光はアリ地獄です。では、どうやったらいいんですか?
今はどこの観光地も、文化財とか、ただの観光資源はすぐに飽きられるんですね。
では、「何がうけるのか?」当地独自の生活文化です。そして、相川ではありませんが、ふれあいガイドのように、土地の皆さんがその土地を語ることです。説明する事です。それが一番うけるし、それが無ければ、観光地は廃れます。文化財も観光資源も飽きられるだけです。皆さん方が、皆さん方の生活文化を何らかの形で観光客に見せることが一番重要だと思います。
ちょっと話が違うかもしれませんが、この間、佐渡汽船の切符の割引に併せてシャトルバスが島内の3箇所を走りました。知っていますか?乗り放題で1,500円、2日間で2,000円でした。これは、みなさんで考えて作られた企画で素晴らしいことです。で、そのバスなんですが、台数が無いので路線バスも出しましたし、観光バスも出しました。観光バスにはガイドが乗っていますが、路線バスには乗っていません。そこに、「ふれあいガイドを乗せたらどうか?」という意見が出てきたんです。「いまさら無理だし、間に合わない。」という声だったんですが、佐渡市の観光課長が頑張ってくれました。「自分がやる!」と言ってくれたんです。あとでFAXを頂いたんですが、旧相川町の職員がガイドとして10人乗ったそうです。この人たちが、もし佐渡弁で説明したくれたなら、それはさらに素晴らしいことですね。
昔、佐渡観光で一番うけたのは、新潟交通の運転手が佐渡おけさを唄うことでした。それにみんな感動して帰るんです。だから、ふれあいガイドの中にはカラオケ好きな人もいるでしょ。唄ってみて下さい。皆さんは、観光が嫌いかもしれませんが、皆さんの生活文化、さっきの能のように、皆さんが普段している事、当たり前だと思っている事が、島の外から来た人にとっては、不思議であって凄い事だと思うんです。実際、凄いんです。それで、何らかの形で見せる、語るんです。そういう事を、観光が嫌いでも是非やってもらいたいんです。
4.観光は確実に変わる
観光客は、皆さんにとってなんなんでしょうか?
結果としては経済的に儲かる事に繋がりますが、さっき、たくさん研究している調査書が出ていると言いましたが、昭和61年(19年前)に、JTBが調査したデータからお話しましょう。
佐渡の入込み者数が、1万人増えると、直接的な観光消費額は約3億円増えるそうです。10万人増えたら30億円です。それに伴う、原材料波及効果は2.7億円。合計5.7億円増えます。所得波及効果は1.9億円。全部で6.6億円増えるという計算になります。観光客が10万人増えたら、佐渡に 66億円のお金が落ちるんですよ。
雇用の第一効果、つまり観光客が1万人増えると、働く人が47人増えます。二次以下の波及効果を併せた雇用総数は83人増加するそうです。あくまで、調査結果ですが、観光は結果として儲かります。でも、佐渡の方々は儲けることに抵抗があるのかもしれないと思っています。観光でです。だけど、次のように考えていただきたいんです。これが、今日の私の結論です。
5.佐渡への観光客は佐渡を光らせる
なんだかんだといっても、新潟県にとって佐渡は観光の象徴なんです。佐渡が無ければ新潟県の観光は無いんです。だから、知事も市長も騒ぐし、私は騒がされるんです。痩せても枯れても、佐渡しか無いんです。痩せても枯れても、人々は佐渡へなびくんです。それを思っていただきたいのと、観光というのは結果的には儲かるが、さっき能の話をしましたが、たまたま東北大学の方がいたので自然に体が動いて、皆さんが自然に教えることが出来たんです。それは何かと言えば、観光客は皆さんの才能を更に磨くといえると思うんです。皆さん自身を光らせるんです。屁理屈のように聞こえるかもしれませんが、私はそう信じています。観光客がくるということは、皆さん方を磨き、光らせるんです。結果、儲かるんです。
観光客によって皆さんは刺激されるんです。観光客によって、皆さんは自分達が素晴らしいと言うことを知らされるんです。観光客は、素直に素晴らしさを認めますし、わかるんです。
そして、その観光の原点である地域の魅力、この佐渡の魅力、皆さんが誇れる佐渡の魅力です。生活文化です。歴史です。伝統です。芸能です。それは何かといえば、子ども達に残すものです。子どもや孫の代に伝えていくものなんです。観光というのは結果として儲けるものであっても、皆さん方を磨き、この島の良さを、皆さん方を輝かせるものなんです。そういう風に考えて頂いたほうがいいと思うんです。
佐渡は、年々人口が減ってますね。みんな出て行きます、外へ。残念ながらそれが事実ですね。でも、それをどうしたら止められるのか?そんなに難しいことを考える事は無いんです。その源泉である地域の魅力を、この島の良さを子どもや孫に伝えて頂くことなんです。その結果、人はまた来るんです。戻るんです。
観光の島の復興にカンフル剤と呼べる、決定的なガンを治すような薬は無いと思います。結果は、皆さん方の心や行動としか申せません。
そこにもう一つ付け加えるとしたら、もう調査はいい。実行に移すという事です。一つでも二つでも実行に移すんです。このことに触れると長くなりますが、島の外の私がこういうことを申し上げて、大変不遜なことで皆さん方には申し訳ないと思いますが、是非とも観光が結果的に儲ける為ではあるが、「島を、皆さんを磨くという事。」そして「地域の魅力を観光客に提供する見てもらうということ。」そのことを「子や孫に伝えて欲しい。」そういう事をお話して、私の話を終わらせていただきます。本当にご清聴ありがとうございました。